■決選投票でも「玉木と書く」
衆院選での「自公過半数割れ、立憲躍進」を受けて、次の政権の枠組みがいまだに見えてこないなか、あぜんとする情報が入ってきた。国民民主党が10月30日の役員会で、11月11日召集予定の特別国会における首相指名選挙で、石破茂首相(自民党総裁)と野田佳彦・立憲民主党代表の決選投票になった場合でも「玉木雄一郎代表の名前を書く」方針を確認した、というのだ。役員会では異論が出なかったというから、玉木氏が一人で暴走したわけではないらしい。
あきれてものも言えない。10月29日公開の記事(「石破首相」を選んでも地獄、「野田首相」を選んでも地獄…国民民主・玉木代表がこれからたどる"いばらの道")の中でも指摘したが、決選投票の候補者は、あくまで最初の投票で誰も過半数に達しなかった場合の、上位2人だけだ。「石破vs野田」の構図になった場合、「玉木」と書いた票は全て無効票になる。
■国民民主に投票した有権者を無視する「職務放棄」
首相を選ぶことは、国会議員にとって極めて重要な仕事の一つだ。なぜなら、その1票は個々の議員だけのものではないからだ。首相指名選挙での1票とは「一人ひとりの国民に代わって、首相を選ぶ権限と責任を与えられた」1票なのである。そのような場で、無効票になるとわかっている投票をあえて行うのは、その議員に票を投じた国民の意思を無視する行為であり、国会議員としての職務放棄である。
28日のTBS番組で玉木氏が「決選投票でも玉木」と発言した時は、テレビ出演で舞い上がって思わず軽口を叩いてしまったのかもしれないと考え「発言を撤回したほうがいい」と指摘したのだが、まさか本当に党の方針にするとは思わなかった。
玉木氏の言動の軽さは今に始まったことではないが、まさかここまでとは。
■重要な政治選択を無視しようとしている
選挙直後に玉木氏と同様の発言をしていた日本維新の会の馬場伸幸代表は、30日に立憲の野田氏と会談した際「大義や具体的な改革案がなければ与することはない」と述べるにとどめた。野田氏への投票にはかなり否定的だとみられるが、それでもいったんは持ち帰って検討するとした。
最低でも現時点では、この程度の対応が必要だろう。石破氏と野田氏のそれぞれから、首相指名選挙での投票を呼びかけられたなら、まず双方の話を聞いた上で党に持ち帰って検討し、もし決選投票となった場合に石破氏と野田氏のどちらに投票するか、党としての態度をきちんと表明するのが、議会人としてのあるべき態度だ。
にもかかわらず国民民主党は、首相指名選挙という極めて重要な政治的選択を避けて、逃げようとしていると断じざるを得ない。
■「石破」と書くのも「野田」と書くのもリスクが大きすぎる
国民民主党にとってこの首相指名選挙での判断が、極めて難しいことは理解できる。
同党の支持基盤である連合は、立憲民主党と国民民主党が連携して、自民党に代わる政権の選択肢となることを求めている。今回の衆院選でも、両党の選挙協力によって当選した議員もいる。石破氏に投票すると決めた場合、党内のハレーションは相当大きいはずだし、何より来夏の参院選に影響が及ぶ可能性がある。多くの議員が地元に帰れば、自民党と直接対峙するからだ。
一方で今の国民民主党は、所属していた議員の多くが立憲民主党に合流し、それを拒んだ議員によって作られた政党だ。メディアではいまだに立憲と同規模の政党のように扱う向きがあるが、今回の衆院選で立憲民主党と国民民主党の議席差は120議席に達している。そんな国民民主党が今さら立憲と協力するのは、特に玉木氏にとっては、過去の経緯を考えても難しい。
さらにややこしいのは、小政党と化して以降の国民民主党には「アンチ立憲」のネット右派に近いスタンスを持つ支持者が、玉木氏個人のファンという形で増えつつあるらしいことだ。国民民主党が首相指名選挙で野田氏に投票すれば、こうした新たな支持層が一斉に離れる可能性もある。
「石破」と書くのも「野田」と書くのもリスクが大きい。同党が首相指名ではっきりとした政治的意思を示すのをためらう気持ちを、全く理解しないわけではない。
■政治には「どうしても決めねばならぬこと」がある
しかし、政治には「逃げてはいけないこと」「どうしても決めなければならないこと」がある。外交・安全保障から災害対応、感染症への対応など、政治が緊急に厳しい選択を迫られる場面は、政権に入ってしまえば山ほど押し寄せてくるからだ。
印象に残っているのは、2011年の東京電力福島第一原発事故で民主党の菅直人政権が直面した「事故対応にあたる東電社員を、荒れ狂う原発から撤退させるか否か」。国家の存亡にかかわる究極の選択の局面であり、「撤退する」「撤退を拒む」のどちらを選択しても、厳しい批判を受けることは免れなかった。
だからと言って何も決めないことは許されない。リスクを取って判断し、責任を負わなければいけないのだ。それが政治である。
首相指名選挙という比較的簡単な政治判断さえもまともにできないのに、もっと厳しい局面が訪れた時、彼らは人ごとのように立ち往生して、何も判断しないのだろうか。そんな政党が今後、国民の生命と暮らしを守ることができるだろうか。国民は彼らに全幅の信頼を置くことができるのだろうか。
■無効票は事実上の「ステルス石破支持」
ここまで書いていきなり前言を翻すようだが、実は国民民主党の「無効票戦術」は、政治的選択を「していない」とは、必ずしも言い切れない。事実上の「石破氏支持」である可能性が高いのだ。
首相指名選挙の決選投票は、過半数の得票を必要としない。「多数を得た者が(首相に)指名された者となる」のだ。ということは、多くの無効票が発生して有効票の総数が減れば、比較第1党たる自民党の党首に有利になりがちだ。
今回の衆院選で、連立を組む自民、公明両党の議席数の合計は215。一方、立憲をはじめ自公以外の全政党の合計(250)から国民民主党の議席(28)を差し引くと、議席数は222。その差はわずか7議席しかない。
222議席のなかには、裏金問題などで自民党から公認を得られず、無所属で戦い当選した議員の議席も含まれている。すでに、このような無所属議員6人が自民党の会派に入るとの見通しも出ており、与野党の差は詰まりつつある。自民党の反省のなさもここに極まれりだが、それはさておき、ここで国民民主党が玉木氏に票を投じて「無効票」となれば、石破氏の当選可能性は格段に上がる。
つまり「決選投票で玉木氏の名を書く」という国民民主党の方針は、実のところ「ステルス石破支持」なのだ。同党がそれを理解していないはずがない。
■与党に恩を売りながら「野党」の顔をできる姑息な戦術
にもかかわらず同党は「石破氏の名前を書いていないのだから、別に支持したわけではない」と言わんばかりだ。自分たちの政治判断をはっきりさせないことで、支持団体の連合を下手に刺激するのを避け、来夏の参院選では「野党」の顔をして、連合や立憲民主党の協力を得ながら選挙戦を戦おうとしている、と考えざるを得ない。
これを姑息と言わなくて何と言うのだろう。ほかのメディアのように、こういう態度を「対決より解決」「政策実現を重視」などと言って持てはやす気には、筆者はとてもなれない。
「石破氏を支持する」と言うのなら、堂々と首相指名選挙で、石破氏の名前を書いて投票すればいい。支持者の批判を受けるリスクは生じるだろうが、その責任を自らが背負い、丁寧に説明して理解を得る覚悟を持つべきだ。「書いても書かなくても結果が同じだから書かない」と言って政治的意思を示さないありさまは、国会議員としてあまりにも情けない。
■「30年ぶりの決選投票」を保身のために無下にするのか
国民民主党に限ったことではないが、全ての衆院議員は、ついこの間行われたばかりの衆院選で、多くの有権者に自分の名前を書いてもらったからこそ当選できたはずだ。有権者の中には、もしかしたら別の候補との間で、悩みに悩んだ人もいるかもしれない。何らかの判断をして名前を書いた1枚1枚の投票用紙が、議員たちを国会へと送り出した。
そんな有権者たちの思いを代弁するため、今度は一人ひとりの議員が「首相を選ぶ」選挙に参加する。それが、当選した彼らにとっての最初の仕事なのだ。それも今回は「30年ぶりの決選投票」という歴史的な局面だ。
国民民主党の議員は、自分たちの保身のために、それを雑に扱おうとするのか。
党としての正式決定は、今後の両院議員総会になる。せめて党の所属議員が一人でもまともな感覚を持ち、玉木執行部をいさめる声が出ることを願ってやまない。
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ジャーナリスト
福岡県生まれ。1988年に毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長などを経て、現在はフリーで活動している。著書に『安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ』(集英社新書)、『野党第1党 「保守2大政党」に抗した30年』(現代書館)。
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<このニュースへのネットの反応>
政権交代まで行けなかったからって国民にあたるなよ
予想通り立民信者発狂。前の記事でも現実を見れてなかったが、言った通りにならなかったら完全にヒスってるな。今の所ではあるが、心配しなくとも国民民主に投票した有権者の期待には最大限応えてるよ。立民は二大政党の夢を見たまま、国民民主や維新が政策を練る裏で共産と一緒に機械的に反対するだけの舞台装置として背景化して次の選挙で用無しとして消えれば良い。
尾中さん、以前までの怪文書はお金でも貰ってるのかと思ってましたが、本気であんな妄想してたから今こんな発狂してるんだなって。
国民の為にジャーナリストに貶されようと一顧だにせず国民の為に主張し国民に支持された政党に何いってるんだ?
立民信者は連立に加わらないのは裏切りだの言ってるが、この状況で加わる方が裏切り。国民民主支持層に石破氏以上に野田氏の外交に期待してる人なんてほぼ皆無だろうし、最大の問題は立民維新国民民主にれいわまで加えても過半に届かず、共産の政権参画が不可避なこと。先に挙げた4政党ですらもうバラバラなのに、共産の意見まで容れるなどそれこそ国民民主に票を投じた有権者が許さない
石破と玉木といえば、共通するのは獣医師会とズブズブで、加計の時にアベガーをやっていた事かな
対して、このままいけば、自公が法案を出し、立共がいつもの如く反対して、実質的に国民民主と維新が成否の決定権を握る構図になる。自公は国民民主か維新のどちらかには賛同してもらえるように毎回是々非々で協議と譲歩を重ね、逆に立民が何を騒いでも一顧だにする余裕もなくなるだろう。こんなアドバンテージをわざわざ捨てる*はいない。
最早何言ってるかはわからないが、悔しさだけは伝わってきた
立憲に与しないからって誹謗中傷ですか?国民は大分前から批判をするだけの政治から脱却を目指しているので政策議論を優先するのは当然。むしろ未だに寝言しか言わない立憲を危惧すべき。共産とべったりな立憲を見限って連合が国民に靡く可能性もあるんですから。
そもそも立憲だろうが自民だろうが、最初から国民に支持されることやってればこんなことになってないだろ。そこを恥じろよ
素直に自民に手を貸すのが気に食わないって書けばいいのに…有権者を代弁した気になっているマスゴミの傲慢さ。
まあ結局こうやって手のひら返すのがマスゴミなんよ。加計学園の時は民進の玉木を英雄扱いしていたくせに、数年経てば自民の仲間だの揶揄しだす。自民党を攻撃する勢力だけが正義なんだろコイツらの頭の中ではな
勝手に立民と国民民主を仲間扱いしてるけど、仲間だったらもともと同じ民主党だったんだから、分かれてないんだけどね。仲間じゃなくなったから別の党になったわけで
単純にどっちにも入れたくないだけやろ。あと見出しが気持ち悪い
「自民も立憲も嫌」って層が支持したからこれだけ議席が伸びたのに、ステルス自民!国民への裏切り!って騒ぐの現実が見えてないんじゃないプレオン?
プル2>立民・社民・共産に協力し無ければイコール自民とでも思ってるんじゃない?
自民も立民もイヤって層が国民民主に流れたんだから、どっちとも組まない、政策ごとに協力するしないを決めますよってのはむしろ公約通りなんよ。玉木代表はアホどもの「国民民主が自分の都合のいいように動いてくれないムキー!!」っていうお気持ちは無視していいよ。つーか、ステルス石破支持とか変な造語作るのやめなさいな、みっともない。好きだよね、パヨって頭悪い造語作るの
尾中www解り易いwwwそういえば衆院選のニコ生特番に出てたねこの人。明らかな立民支持の論調で辟易したわ。今度は国民民主が立民の脅威になると判断して叩きに来たか。そろそろイデオロギーで政治を語るの止めてもらっていいですか?
どっちにも付かないってだけなのにプレオンが発狂して叩きだすのが答え。国民民主はずっと今の路線で頼むぞ
狡猾な報道の手段ばかりだな。自民を安倍さんと言う邪魔者を始末して悪夢と地獄の民主党政権寄りに出来て狂喜乱舞の報道。も残念ながら国民と言う煽動させられなかった日本国民の支持政党が迷惑で仕方が無いと。